さいたま市浦和の会計事務所、中小企業の経営パートナー「税理士法人新日本経営」です。
会社の役員が退任する際、それまでの功績や在任期間に応じて退職金を支給することがあります。
ところが、役員を退任した後も同じ会社で勤務を続ける場合はどうでしょうか。
例えば、長年取締役を務めてきた方が取締役を退任し、その会社の経営には関与せずに一部署のアドバイザーや一般の従業員として勤務を続けるケースです。
このような場合「会社を辞めていないのだから、退職金として扱えないのでは?」と疑問に思う方もいるでしょう。
退職金を受け取る個人側では、退職所得して扱えるかどうかによって所得税の負担が大きく変わる可能性があります。また、会社側にとっても支給した退職金を法人税の計算上どのように取り扱うのかという問題があります。
結論から言うと、勤務が継続しているからと言って必ずしも退職金として認められないわけではありません。
重要なのは、形式的に会社を辞めたかどうかだけではなく、実質的に退職したのと同様の状況にあるかどうかという点です。

そもそも「退職所得」とは?
所得税法上、退職所得とは一般的な給与とは異なり、退職したことを原因として一時に支払われる給与を言います。
つまり、本来その人が退職しなければ支払わなかったもので、退職を原因として支給されるものが基本的な退職所得の考え方です。
そのため、会社を退職していないにもかかわらず「退職金」という名目で支給した場合には、本当に退職したことに基づく支給なのかが問題になります。
一方で税務上は、勤務関係が完全に終了していなくても、一定の場合には退職所得として取り扱うことが認められています。
ここで重要になるのが、所得税基本通達30-2です。
役員から従業員になった場合はどう考える?
所得税基本通達30-2では、勤務が継続している場合であっても退職所得として取り扱うことができるケースが示されています。
例えば、使用人が役員に就任した際に、それまでの使用人としての勤務に対する退職金を支給するケースが挙げられています。
では、反対に役員を退任して、その後は使用人として勤務する場合はどうでしょうか。
このケースについては明確な例示がありません。
そのため「通達に書かれていないのだから、退職金としてはみとめられないのでは」と考えてしまいがちです。
しかし、通達に具体的な事例として列挙されていないことだけを理由に、直ちに退職所得として認められないと判断するのは適切ではありません。
通達に示されている事例は、あくまで一定のケースを例示したものです。
通達の例示に該当しないからと言って、それだけで退職所得性が否定されるわけではありません。実際に、逐条解説において、例示に合致しないことだけを理由として、直ちに退職所得であることを否定するものではない旨が示されています。
「役員を退任した」という事実だけで判断しないことが重要
役員から使用人になるケースで特に重要なのが、役員としての立場を実質的に退いたといえるかという点です。
っ他追えば、取締役を退任した後、一般の住魚印として勤務するのであれば会社との契約関係は、役員としての「委任契約」から従業員としての「雇用契約」へ変わることになります。
それまで取締役として会社の経営に関与していた人が、退任後は経営上の意思決定に関与せず、一部門のアドバイザーなどとして業務をおこなうのであれば、役員としての職務からは実質的に退いたと考えられる可能性があります。
一方で役員を退任した後も、実質的には会社の経営に関与していたり、従来と同じような権限を持って業務をおこなっていたりする場合は、単に登記上の役員ではなくなったというだけでは退職したとは認められにくくなる可能性があります。
したがって「取締役を退任した」という形式だけを見るのではなく、退任前と退任後で会社における立場や職務内容、権限などがどのように変わったのかを確認することが重要です。
会社側の法人税の取扱いにも注意
退職金を受け取る個人側だけでなく、退職金を支給する会社側の税務についても確認が必要です。
基本的には、受け取る側で退職所得とされるかどうかと支給する側で退職金として取り扱えるかどうかは整合的に考えることになります。
役員が実質的に退職したのと同様の状況にあることを前提といて退職金を支給する場合については通達等で一定の取扱いが示されています。
そのため役員退任時に退職金を支給する場合には「退職金という名前で支給したから大丈夫」と考えるのではなく、退任後の職務内容や権限、会社との関係なども含めて実態に即して判断することが大切です。
まとめ
役員が退任した後も同じ会社で勤務を続ける場合であっても、一定の要件を満たし、実質的に役員としては退職したと同様の状況にあると認められるのであれば、退任時に支給した金銭を退職金として取り扱える可能性があります。
特に、役員から使用人への立場が変わるケースでは退任後の職務内容や権限が退任前と大きく変わっているかどうかが重要です。
また、退職金の取扱いは受け取る個人の所得税だけでなく、支給する法人の法人税にも関係します。
役員退任後も勤務を継続する予定がある場合には、退職金を支給する段階になってから判断するのではなく、退任前から退任後の役職や職務内容、権限などを整理しておくことが大切です。
役員退職金は、金額だけでなく、支給のタイミングや退任後の勤務実態によって税務上の取り扱いが変わる可能性があります。
支給を検討される際には、事前に顧問税理士へ相談し、税務上の問題がないか確認しておくことをおすすめします。
※本記事は、掲載日時点の法令・通達等に基づいて作成しています。今後の法令改正や制度の運用変更等により、内容が変更となる場合があります。情報収集等をして記事は作成しておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。また、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。
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