さいたま市浦和の会計事務所、中小企業の経営パートナー「税理士法人新日本経営」です。
仕事の対価として支払う金銭が「外注費」となるのか「給与」となるのかは税務調査の時に問題になることがあります。
2023年10月から導入されたインボイス制度はこの外注費か?給与か?問題には関わってくるのでしょうか。
インボイス制度導入後の外注費等と給与等の考え方について解説をします。
インボイス発行事業者への対価が給与に該当する場合も
取引をしている個人事業主へ支払う役務提供の対価が外注費か給与かの判断に、その個人がインボイス発行事業であるかないかということは影響がありません。
これまで通り、契約形態や事実関係をふまえた上で個々に判断することが基本的な考えです。
つまり、インボイス発行事業者の個人への支払は外注費としていても、税務調査等で事実認定の結果、給与と指摘されるケースがあることに変わりはないということです。
外注費と給与の区分とは
インボイス発行事業者と登録を受けられるのは課税事業者であり、個人が登録する場合は何らかの事業をおこなっている者が前提です。
その前提から言うと、役務提供の対価を外注費として取り扱うことは問題がないように思えます。
しかし、「外注費等」と「給与等」の区分、つまり、所得税の「事業所得」と「給与所得」の区分や、消費税の「個人事業者」と「給与所得者」の区分は、支払う相手先の個人がインボイス発行事業者であることから判定をするものではないと考えられています。
外注費等 | 給与等 | |
所得税 | 事業所得 | 給与所得 |
消費税 | 個人事業者 | 給与所得者 |
当事者間の契約形態等の事実関係をふまえて、それぞれの区分を判定することはインボイス制度開始後においても同様に判定されます。
外注(個人事業者)と雇用(給与)の違い
外注(個人事業者)と雇用(給与)の区分は、雇用契約等の有無で判断されますが、雇用契約が明らかでない場合は以下事項を勘案して判断するとされています。
1. 他人が代替できるか(その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか)
2. 管理者の指示・命令を受けるか(役務の提供にあたり事業者の指揮監督を受けるかどうか)
3. 危険負担(まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか)
4. 材料等の提供(役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか)
より詳しい違いについてはこちらのコラムご参照ください>>>「外注と雇用の違い、税務上の留意点」
なぜ違いを明確にする必要があるのか
なぜ外注費か給与か判断が必要なのでしょうか。
なぜなら、源泉徴収や消費税の仕入税額控除、社会保険などの取扱いが異なるからです。
過去に東京地裁令和3年2月26日の判決事例を確認します。
○概要 塗装工事業等を営むX社(原告)は、従業員に対して、健康保険及び厚生年金保険に加入し、給与から各保険料を徴収する旨を説明。しかし、作業員2名(各作業員)から、“給与が減額されるのは困るので、外注先として取り扱ってほしい”との申出を受けたため、「外注先」への報酬として金員を支払った(各作業員は事業所得として所得税の確定申告)。 X社が、各作業員に支払った金員を課税仕入れとして、これに係る消費税額を仕入控除税額に計上して消費税の確定申告を行ったところ、国が、同金員は「給与等」であり、課税仕入れに該当しないなどとして消費税の更正処分等と源泉所得税の納税告知処分等を行った。 |
X社は支払った対価を外注費として取り扱っていたため課税仕入として消費税の仕入税額控除の処理をしていました。
しかし、給与であると判断されたため、仕入税額控除が認められないことになり、消費税の更正処分をおこなうことになりました。
また、給与と判断されたため、源泉所得税においても納税義務を負う事ことになります。
一方で、支払を受けた個人が課税売上として消費税の申告を行っていた場合は、納付すべき税額等に誤りがあることになるので消費税の一部が還付対象となります。
まとめ
インボイス発行事業者の登録をした個人であっても、委託者である会社と個人の間で交わす契約形態や状況、事実関係をふまえて外注費であるのか給与であるのかの判定をすることになります。
外注費として取り扱いをしていても税務調査などで給与と判断された場合は仕入税額控除が否認されたり、源泉徴収漏れの指摘があったり、ペナルティを受けることになります。
インボイス発行事業者だからといって安易に外注費として取り扱わず、当事者間の契約や請負状況など確認を怠らないようにしましょう。
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