さいたま市浦和の会計事務所、中小企業の経営パートナー「税理士法人新日本経営」です。
近年、政府の支援制度を活用したIT導入が進む一方で、多数の不正受給が明らかになっています。
特に、IT導入補助金に関しては、虚偽の申請や架空の取引が発覚し、国が調査を強化する事態となっています。
今回は、不正受給の背景や問題点、調査の具体的な方法、企業が気を付けるべきポイントについて詳しく解説します。
調査が実施される背景
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を目的として、業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援する制度です。
しかし近年、この補助金の不正受給が問題視されており、適正な運用を確保するための調査が実施されることとなりました。
不正受給の具体的な事例として下記が挙げられます。
1.本補助事業と同一の内容で国から他の補助金、助成金等の交付を重複して受けていた場合。
2.事業期間中及び補助金交付後において、不正行為、情報の漏洩等の疑いがあり、補助事業者として不適切な行為を行っていた場合。
3.ITツールが導入されていない、役務の提供がなされていない等、補助事業が遂行されていない場合。
4.補助事業者自身が行うべき行為(申請マイページの開設や交付申請における手続き等)を当該補助事業者以外が行っていた場合(なりすまし行為)。
5.ITツールの販売金額に占める補助事業者の自己負担額を減額又は無償とするような販売方法、あるいは、一部の利害関係者に不当な利益が配賦されるような行為を行っていた場合。(下記例①②)
例① ポイント・クーポン等の発行・利用を行うことでITツールの購入額を減額・無償とすることにより、購入額を証明する証憑に記載の金額と実質的に支払われた金額が一致しない場合。
例② ITツールの購入額の一部又は全額に相当する金額を口座振込や現金により申請者へ払い戻すことにより、購入額を証明する証憑に記載の金額と実質的に支払われた金額が一致しない場合。
参考:IT導入補助金は不正を絶対に許しません|IT導入補助金2025
このような不正が横行すると、本来支援を必要とする企業が補助金を受け取れないだけでなく、制度自体の信頼性が損なわれ、将来的な支援策にも悪影響を及ぼしかねません。
そのため、国や関係機関は、適正な補助金運用の確保に向けて調査を強化する方針を打ち出しました。
不正受給の問題点
不正受給が発覚すると、以下のようなリスクが発生します。
返還命令とペナルティ
不正が判明した場合、補助金の全額返還が求められるだけでなく、加算金や延滞金の支払いが課されることがあります。
企業イメージの失墜
不正が公になった場合、企業の信用が著しく低下し、取引先や金融機関からの評価も悪化する可能性があります。
法的責任の追及
不正の事実が確認された場合、交付決定の取消のほか事業者名の公表、登録抹消だけでなく、警察への通報等の措置をとることがあります。
調査の具体的な方法
IT導入補助金事務局では不正受給に関して、Webフォームを用いた事業の調査を実施しています。
補助金交付を受けた全ての事業者にメールが送られ、補助事業における不正行為やITツールの利用状況を指定されたURLに回答します。
これはIT導入支援者、補助事業者に対する「立入調査」をおこなうための調査で、不正が確認された場合や立入調査に応じなかった場合はIT導入支援者は登録抹消、補助事業者は交付取消や事業者名の公表、警察へ通報されることもあり得ます。
2023年7月31日以前に交付申請した場合の調査期間が公開されています。
IT導入補助金2020の補助事業者:2025年1月中旬~2月中旬
IT導入補助金2021の補助事業者:2025年1月下旬~2月下旬
IT導入補助金2022の補助事業者:2025年2月中旬~3月中旬
IT導入補助金2023の補助事業者:2025年2月上旬~3月上旬
現在、事務局の調査に基づきIT導入支援事業者として不適当であると判断された支援事業者は公表されています。今後、補助対象事業者も不正受給と判断され場合は公表されるかもしれません。
企業が気を付けるべきポイント
調査の強化に伴い、企業は補助金を適正に活用するために以下の点に注意する必要があります。
導入実績の記録と保管
不正の具体例でも示した通り、ITツールの購入額にポイントやクーポンを充てたり、購入額の一部を払い戻して実際の購入額と信憑との金額が一致しない状況などは不正受給に当たります。
ですからITツールやソフトウェアの導入証拠(契約書、請求書、納品書、使用記録など)を適切に保存しましょう。
IT導入支援事業者の選定に慎重になる
まず過去に不正事例のある業者と取引しないよう、事前に情報収集を行いましょう。
採択率が高いという点だけに注目せず、相談時の内容にも注意が必要です。
金額に虚偽を記入する裏ワザやキックバックをほのめかしたりするなど疑わしい話には乗らないようにすべきです。
もし不正受給に気づいたら
不正関与に気づきながら補助金を受け取ってしまったり、補助金受取後に不正関与に気づいた場合について自主的に返還手続きをする方法があります。
自己申告書による補助金返還手続き
不正関与があるにも関わらず補助金を受け取ってしまった方の手続き方法です。
IT導入補助金HPより【自己申告書】をダウンロードして、必要事項を記入後事務局へメール提出します。
事務局よりメールが届いたら、通知内容を確認して指定の返還口座へ金額を返還します。
なお、補助金受領の日から納付までの日数に応じて年利10.95%の加算金が課されます。
誓約書による補助金返還手続き
意図せず補助金を受け取ってしまった方の手続き方法です。
【誓約書】をダウンロードして、必要事項を記入後事務局へメール提出します。
事務局より届いたメール内容に従い、指定の返還口座へ金額を返還します。
まとめ
IT導入補助金の不正受給問題に対する調査が強化される中、企業は適正な申請・運用を心掛けることが求められています。
不正を防ぐためには、募集要項をきちんと確認し、内容を理解することです。また、信用できるIT導入支援事業者との取引や外部の専門家の活用もリスク回避につながります。
補助金制度を活用する際は、制度の趣旨を理解し、適正な申請・運用を徹底することで、企業の成長と業界全体の健全な発展につなげていきましょう。
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